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25話 規格外の巨大店舗と、ミリアの困惑

Auteur: みみっく
last update Date de publication: 2025-10-10 06:00:35

 朝食を食べ終え、俺とミリアは馬車に揺られ、目的の場所へと向かった。ギシギシと揺れる車窓から見える景色は、活気に満ちている。やがて馬車が止まり、扉が開く。目の前にそびえ立つ建物を見て、俺は思わず息を呑んだ。

 は? ……え? デカ過ぎじゃないか? これ……薬屋なのか? ユーテリア王国の店の五倍くらいあるんじゃないか?こんなにデカい必要はないんだけど。目の前に立ちはだかる巨大な建物は、まるで古城のようだ。重厚な石造りの壁が空に伸び、入り口の木製扉は、大人三人でも抱えきれないほどの大きさがある。周囲の建物が小さく見えるほどの威容に、俺は呆然とした。

「うわっ。デカすぎ! これじゃ……従業員5倍くらい必要じゃん!」

「ですわね……。何を考えているのでしょう……」

 ミリアも呆れたように呟いた。その青く透き通った瞳には、困惑の色が浮かんでいる。だが、その巨大さを見た瞬間、ふと閃いた。そうだ! せっかく用意をしてくれたんだから、前々から販売を考えていたものを売るのに丁度良いかもしれない。薬だけじゃなく、武器やアクセサリーも一緒に売ってみようかな……。

「なぁ……ミリア。武器とアクセサリーも売るのってどう?」

「仕入先は、ございますか?」

 ミリアは冷静に問い返した。その視線は、俺の顔に釘付けだ。

「まぁ……大丈夫かな~」

 俺は曖昧に答えた。詳細を説明するのは面倒だった。

「それでしたら、わたくしから国王に伝えておきますわ」

 ミリアは快諾してくれた。その表情は、俺の提案に乗り気なようだ。瞳の奥に、新たな事業への期待が宿るのがわかる。

「あ、うん。助かる!」

 ミリアは、懐から筆と紙を取り出し、流れるような筆致で手紙を書き始めた。空の店舗の護衛をしていた兵士が五人ほど近くに立っている。ミリアは、書き終えたばかりの手紙をその兵士の一人に手渡した。

「今すぐに、これを国王に届けてくださる?」

「はい! お任せ下さいッ!」

 兵士は、踵を返し、一目散に走り出した。その背中は、あっという間に小さくなり、人混みに紛れて見えなくなった。わざわざ走らなくても良いのに……。

♢従業員募集と国王への配慮

「それと従業員は、どうしようか?」

「わたくしからは……信用が出来る者を三名を用意いたしますわ」

 ミリアは胸を張って言った。その声には、揺るぎない自信が感じられる。

「その人達を各お店の責任者にするとして……他に従業員を募集しないとな……」

 薬屋、武器屋、アクセサリー屋の責任者にちょうど良いだろう。ミリアの紹介だし信用できるはずだ。だが、三人だけではこの広大な店舗を開店することはできない。これから募集して、教育もしないとだ。これじゃ時間が掛かりそうだなぁ……。

「募集ですか? それは……まずいですわ」

 ミリアの青く透き通った瞳が、真剣な光を帯びた。その表情は、俺の考えを諌めるかのように、固い。

「え? 何で?」

「国王も絡んでいる事業ですし、信用できる者でないと……ですから国王にお任せしましょう? こちらが用意をした者が問題を起こした場合、こちらの責任になってしまいますし」

 ミリアは冷静に、そして理路整然と説明した。彼女の言葉には、貴族としての責任感と、先を見通す賢さがにじみ出ている。

「店も用意してもらってるし悪いんじゃない?」

 俺は少し気遣って言った。恩義を感じていた。

「何を仰っているのですか。国王からお願いをされてお店を出しているのですよ!国王が店を用意するのは当たり前ですし、従業員を用意するのも国王ですわ!」

 ミリアは力強く言い切った。その声には、一切の迷いがなかった。俺の常識とは全く異なる感覚に、ただ圧倒される。

「そうなの?その辺は……ミリアに任せるわ。俺は知らないし」

 俺は素直に降参した。異世界の常識は、俺には理解しきれない部分が多い。その時、聞き慣れた、少し上擦った声が響いた。

♢レニアとの再会と新たな役割

「ユウヤ様! お礼とご挨拶に参りましたっ」

 下級貴族のレニアが、息を切らしながら駆け寄ってきた。彼女の顔には、喜びと感謝の念が溢れている。その瞳は、希望に満ちてキラキラと輝いていた。

「あ、レニア! お父さん元気になった?」

「は、はい! 頂いたお薬を飲ませて直ぐに良くなりました。今は体力作りを頑張っています」

 レニアは満面の笑みで答えた。その声は、心からの安堵と喜びを含んでいる。

「良かったね」

「新しいお店を出すと、伺いまして……お手伝いをと思いまして……」

 レニアは少し緊張した面持ちで、しかし熱意を込めて申し出た。その声には、純粋な奉仕の心が感じられる。

「え? レニアは、領主の仕事があるんじゃないの?」

 俺は少し戸惑った。貴族の娘が、こんなところで働いて良いものかと疑問に思ったのだ。

「わたしは、次女なので領主経営はお手伝い程度ですし、長女がお父様の面倒を見ながら経営の方を行っていますので大丈夫です」

 レニアは丁寧に説明した。彼女の言葉は、現状を的確に伝えてくれた。

「でも……下級とはいえ……お貴族様にお店の手伝いをさせるわけにはねぇ……」

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